黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス
それはまさに、恐ろしい戦禍の予感だった。

その日の私は早朝……目が覚めた時から、言い様のない胸騒ぎに襲われていた。

そして、その胸騒ぎに合わせて右手の甲もドックン、ドックンと脈打つように疼いて……白い痣が薄っすらと浮かび上がってきていた。


(何……これ? この禍々しい予感は一体……?)


鳥肌が立つほどの心のざわつきに、私は居たたまれなくなって部屋を飛び出し、レオパードの元へ駆けた。


理由は分からない……得体も知れない。

だけれども、これから地獄のような戦乱が始まる……

そんな、言い様のない不安に襲われていたのだ。


「レオパード!」


プリンスの部屋に入ると……私はさらに驚いて、胸の中では心臓がバクバクと鳴った。


だって、レオパードの額にはくっきりと黒豹の痣が浮き出していて。

彼の全身からはまるで炎のように赤いオーラが立ち上っていたのだ。


「何、これ? 一体、何が起こるの?」


不安と心の騒つきを抑えられない私は、泣きそうになるのを堪えて尋ねた。

すると彼は、自らの内から湧き出す闘志を抑えるかのように、両手を交差して自らの肩を押さえ、ゆっくりと話した。


「ウルフとの戦乱が……始まる」

「えっ?」

「この身の血が報せているし、伝令も入った。ウルフの者達が……アルビンへ向けて動き出している」

「そんな……」


私は信じられない想いで呟いたが……

心の内に眠る本能は、しきりに私に訴えかけた。

今日こそが戦乱の始まり。

逃げることも、後ろを向くこともできない……前を見て戦うしかない!

どうやっても避けられない、ウルフとの激闘の幕が切って落とされたんだって。
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