黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス
「うらら……アルビンのプリンセスが?」


奈美は忘れることのできないその名前を反復して尋ねた。


忘れることができない……忘れられない。

生まれて初めて、奈美自らの美貌に対するプライドをズタズタに引き裂いた女。

そして、「うらら」なんて名前の女は滅多にいない……何より、奈美はその運命に確信を持っていた。

アルビンのプリンセス……うららはきっと、元の世界の『香坂 麗』本人だって。




「はい、左様です。アルビンのプリンセスはうららにございます」


ウルフの家臣は奈美の反応に不審を抱きながらも頷いた。


すると……


「フッ……ハハ、キャッハッハハ!」


奈美は大口を開けて笑い始めたのだ。


「ナミプリンセス……どうされました?」


家臣は思いも寄らない奈美の反応に恐れをなしながらも尋ねた。

すると、奈美は鋭い目をキッと家臣に向けた。


「うららは、私が殺すわ」

「はっ……」

「お前達なんかには任せておけない。私が殺すって言ってるのよ!」

「はっ……はぁっ」


奈美の怒鳴り声に家臣達は尻込みをした。



奈美はこの運命に感謝した。

元の世界ではできなかったこと……自分の手で麗を始末する。

それが、この世界では何の足枷もなくできる。

そのことに、彼女は言い様のない高揚感を覚えていたのだった。
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