黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス
即席の準備を整えて、レオパードと共にペガサス車に乗り込もうと足を掛けた時……


「うらら!」


不意に後ろからかけられた声に振り向いた。


「サーバル……」

「これ。受け取って」

「えっ……」


サーバルは右手に持った美しいネックレスを私に渡してくれた。


「サーバル。これ……」

「小さい頃、お母さんが僕にくれたお守り。ずっと僕の宝物で、これを持っていると力が湧いてくるような気がした。
うららは今日、僕とこの国を守ってくれて。僕にできることなんて、何もないけれど……せめてこれを僕だと思って」

「えっ、そんな。あなたの宝物を私に?」


サーバルは澄んだ瞳で私を見詰め、かたく頷いた。


「うん。だから……絶対に、無理しないで。またこのアルビンに来て、元気な顔を見せて」


彼の祈りにも似た想いは、私の胸にもしっかりと届いた。



私はそのネックレスをもう一度、よく見た。

それは小さな青い石のネックレスで。

まるで吸い込まれそうなほどに綺麗で。

アルビンの宝玉の欠片かと思うほどで……

それを自分の首にかけただけで、私の全身に力がみなぎってくるかのようだった。


「分かった。ありがとう、サーバル。私、絶対に勝って……またアルビンに来るから。あなたも、絶対に無理しないで……元気な顔を見せて」


私のその言葉にサーバルは透き通るような笑顔で頷いて……

その笑顔が健のものにしか見えなくて、私は込み上げる想いで、また胸がいっぱいになったのだった。
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