黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス
いつもそうだった。

まるで私に憧れているかのように無邪気に話しかけてくれる奈美は、健と二人……貧しく必死に生きている私が幸せになれるように考えてくれた。

そう。まるで、私の幸せを祈ってくれているかのようだった。

だけれども私は、自分が幸せになるなんて想像することもできなかった。

それは、男達にボロボロに汚された過去……

どんなに素敵と言われる男性を見ても、私の中では幼い頃のあのトラウマがフラッシュバックするのだ。

だから、私は……自分の幸せを願ってくれている唯一の友人を突き放すことしかできなかった。


「ごめん。私、家に帰って健の夕食の支度をして、バイトに行かないといけないから」


いつものように素っ気なく、私に対して寂しげな瞳を向ける奈美と別れた。
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