黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス
すぐに救急車で運ばれた健は緊急の処置を受けた。

病室の廊下で私はずっと祈っていた。


(何で……どうして?

神様は、私から最愛の……世界でたった一人の弟までも奪うの?

私ならどうなってもいいから、だから……健を助けてよぅ!)


私は幼い頃……自分が汚された時の何倍もの、苦しくて悲しい涙を流したんだ。



処置室のドアがガチャっと開いた。


「先生! 健は……?」

「どうにか、一命を取り留めました」


先生のその言葉に私の目からは熱いものが吹き出して、その場にへたり込んだ。


「よかった……本当に、よかった」


たった一人の弟……彼を失ったらもう、私は生きていくことができなかった。

だから、私は束の間の安心で張り詰めていた緊張が一気に解放されて。

両手で顔を押さえて泣き出したのだった。
< 79 / 167 >

この作品をシェア

pagetop