黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス
第五章 戦乱の始まり
いつも通りの朝……

廊下には、変わり映えのしない私の怒鳴り声が響き渡る。


「こぉら、ジョン! 私の肌着、返しなさい!」

「ははっ、うらら。こっちだよー!」

「こっちだよー……じゃない! 寒いでしょうが! 待ちなさい!」


最近はずっとこんな調子で、朝は私の衣類を奪ったジョンとの追いかけっこで始まる。

そしてここ、パンターにも冬のような季節があるらしく……

「うー、寒! ……ったく、あんのクソガキ!」

そう。朝はもう、身震いするほどに寒いのだ。

だから、毎日のように私の服を取って意地悪するこのガキ……本当に、困る!



やっと廊下の端に追い詰めてやって……私は両手を広げた。


「ここまでよ、ジョン。観念なさい!」


しかし、振り返ったジョンはニヤッと笑った。


「まだまだだよ! そら!」

「あっ!」


左腕の下を器用にすり抜けられて、私は慌ててターンした。


「こぉら、返しなさいってば……わっ!」


ターンした拍子に、私は廊下の床に滑ってつるんと倒れそうになった。

すると、温かくて優しい手がそっと私を受け止めてくれた。


「大丈夫ですか、うらら?」


聞き慣れた静かな声……顔を上げると、愛しい彼の微笑みが目に映った。


「レオパード……」


彼の手から伝わる温もりに、私の心はぎゅっとつかまれて……

すると、さっきまで悪戯っぽく笑っていたジョンは、途端に膨れっ面になった。


「もういい! 返す!」


ジョンは乱暴に、私の服を投げ捨てた。


「こぉら、ごめんなさいは?」


ジョンは私の剣幕にも動じず、ベッと舌を出して子供部屋に戻った。

私の口から、はぁっと溜息が出た。


「全く、ジョンのやんちゃっぷりも、困ったもんよね」


私がぶうぶう文句を言うと、レオパードはクスッと笑った。


「ジョンがやんちゃなのは、プリンセスに対してだけでしょうね。私やオルビに対しては、とてもいい子ですよ」

「全くもう……本当、嫌んなっちゃう」


その理由は私も気付いてはいるんだけど……でも毎朝毎朝、寒い目にあうのは腹が立つ。

私はイライラしながら肌着を着た。
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