イン a ドリーム ■
バスの席は全て埋まっていて、大学生らしき男性が運転席寄りのつり革に掴まっていた。

私はその人と十分に距離を取ってつり革に手をかけ、灼熱の暑さから解放された安堵の溜め息を小さく吐く。

だが居心地が良かったのは少しの間にすぎず、あれほど待ちわびたバスは毎度のことながらガンガンに冷房がかかっていて、これでもかとかいた汗が体を急激に冷やしていく。


寒い…


暑いって言ったり寒いって言ったり我ながらわがままな気もするが、寒いもんは寒いのだ。


次の停留場に止まると、後ろから押される様に見知った顔がバスに乗ってきた。


「あー子、おはようー」


これ程の暑さだというのにたー子には全く効いていないようで、朝から爽やかな笑顔が私の横へと並ぶ。


「おはようー」


バスにはあっという間に流れ込むように人が押し寄せ、隣の人と体若しくは手に持つ鞄類のどこかしらをぶつけなければならない程の混み具合になった。


バスの乗客の殆どはワイシャツ姿の大人だ。


世の学生達はだらだら家で過ごしている輩が大半の夏休み時期、学生の様な長期休みもなく働きに行く大人の皆様方ご苦労様です。


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