叶うはずもない恋

ガチャンっ


大きな足音とともに、勢いよくドアが開く。
部屋にどしどし入ってきたのは、葉汰の姉である花緒だった。


「ようちゃん!!学校でしょーが」

花緒は、大きな声で葉汰を叱る。

「あ、ちょっ、姉ちゃんー!ノック…」

紫苑家に、両親がいない分、花緒はこの家の家事担当であるのだ。

ゴロゴロタイムが、粉々になってしまったと葉汰は思っていた。

「はぁーあ!ほんと、あんた馬鹿なんだから学校ぐらい出席しなさいって言ってるでしょ」

「…姉ちゃーん、じゃあ学校まで送ってよぅ」

葉汰は反抗はせずに甘えてみる。

「男でしょ!暑さに負けずに歩け!」

やっぱり叱られた。
花緒は口が強い。

(そういえば、俺、男なのに姉ちゃんに勝てたことないな)


「…っ…じゃあ行く。…行ってくるよ」

半泣き状態の葉汰に花緒は、頭をなでて、優しい言葉をかける。

「ほら、お弁当。がんばってきなさい」

「…ありがとう。」

葉汰は制服へ着替えて、ダラダラタイムから気持ちを切り替えた。

花緒は葉汰が着替えてる間に部屋の掃除を始めていた。

花緒は学生と家事の両立をしている。

葉汰は手伝うと汚くなるからダメだと花緒に言われるからしてないが、花緒に感謝してもしきれないのだ。

「あのさ、姉ちゃん、きっと母さんと父さん、姉ちゃんを誇りに思ってるよ」
葉汰は、そんな花緒を見ていると、つい言葉が漏れてしまった。

「なにー?おだてても学校まで送らないよ」

なんて、花緒は、言いながら嬉しそうに笑っていた。


時間は遅刻へと迫るなか、葉汰は1階へ降り、リビングへ向かった。


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