叶うはずもない恋
「姉ちゃーん、行ってくるよー」
葉汰は花緒に声をかけた。
「はーい。行ってらっしゃい」
「姉ちゃんも、気をつけなよ学校!」
花緒とやり取りを終え、家を出ると、カナが歩いていた。
カナとは、つまり、葉汰の幼なじみで家は近所のお隣さんである塩谷奏時のこと。
ということは、そう、葉汰の片想いの相手だ。
「カナ?」
葉汰は、奏時に声をかけた。
葉汰の一方的な気持ちだけだから、支障は特にない。
「あ…」
(カナは、あんまり喋らない大人しいイケメンだ。何年も一緒にいるせいか、考えてることは、わかる。)
「カナ遅刻したんだろ」
「寝坊した。朝ごはんは食べた」
「兄ちゃん送ってくれるから、乗って」
「おい、葉汰。いーけどさ」
勝手に決めたから龍汰がつかさず、突っ込んできた。
(聞こえてたのか)
「ありがとうございます。」
奏時は、お構い無しに礼を言い始めた。
「マイペースだなあ、ほんと。早く乗りな、奏時」
龍汰は、奏時に負けて、笑ってた。
奏時のことは、当たり前だけど花緒も、龍汰も知っている。