*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
 「杏奈?どうかした?」

 修平さんは、自分の皿を脇に置いて、ベッドサイドの私の隣に膝を着いた。
 そのまま、俯いた私の顔を覗き込んでくる。

 「俺、やっぱり杏奈のこと傷つけちゃったかな…朝から自分本位で無理させてしまったから…。歯止めが効かなくって、本当にゴメンな。」

 それから、お皿の横に置いた私の左手を自分の手で包み込んだ修平さんが、「心の底から反省してる」と私に言った。

 (ちがう…)
 (修平さんに謝ってほしいことなんて、何もないの…)
 (修平さんこそ、本当は我慢してるんじゃないの?…)
 (分からないことだらけの私に、合わせて疲れてないのかな…) 

 頭の中には次々と言葉が浮かんでくるのに、それをどうやって口に出したらいいのか分からない。

 黙って俯いたままの私のことを見つめる、彼の視線を痛いほど感じる。

 (私が口を開くのを根気強く待ってくれているのかな…)
 (もしかしたら、またへそを曲げた面倒くさい女だと辟易しているのかも…)

 色んな思いが瞬時に駆け巡って、私は自分の気持ちを言葉に出来ずに、ただただ押し黙ることしか出来ない。

 そんな私を見かねたのか、修平さんが私の顔を覗き込んだその時、大きな電子音が二人の間の空気を震わせた。

 音のするほうへ、二人とも目線を向ける。
 鳴っていたのは、修平さんの携帯電話だった。





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