子爵は新妻を独り占めしたい
「しばらくはここにいることになるらしいぞ」

「そうなんですか…」

「見に行くか?」

そう言ったエリックに、
「えっ?」

紗綾は彼の方を振り返った。

自分を見つめている緑の瞳と目があった。

「もちろん、サーヤの都合を考えてからだけどな」

エリックはそう言って笑った。

(あっ、笑った顔を初めて見た…)

初めて見せた彼のその笑顔に紗綾は見とれてしまった。

「私の都合、ですか?」

「どうだ?」

まるでデートの約束みたいだと、紗綾は思った。

(でも、これだって半分はデートみたいなものだよね…?)

紗綾は心の中で呟くと、
「いいですよ、行きましょうか」
と、答えた。

「ああ、楽しみだ」

その答えが嬉しいと言うように、エリックは笑いながら言った。
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