はつ恋【教師←生徒の恋バナ】
書道部の活動は、毎週水曜日。



だけど、私たちが自主練できるようにと坂下は都合がつく限り部室に詰めていた。



うちの部員は誰も、自主練なんかしないのに…。



周りに他人がいない環境が気に入って、坂下がいる日は、私も部室に向かって筆を手にした。



指導を受ける目的なのはもちろんだけど、坂下と喋ることも楽しみだった。



今日も、私は坂下と2人きりで部室にいる。



「先生、新聞部の企画にネタ提供したんだって?」



「ええ、私の家を見たいということでしたから…。」



今回の企画で参加者を募ったら、人が集まりすぎて抽選になった。



私も行きたかったから応募したけど、残念ながら抽選に漏れた。



深夏に頼めば裏で手を回してくれたかもしれないけど、坂下のことを散々嫌ってる言葉を吐いていた手前、言いづらかった。



以前、坂下に見せてもらった和歌ちゃんの写真が、どれも幸せそうに笑ってたことを思い出した。



「先生んち、あったかいんだろうな…。」



ウチが冷え冷えとしているから、羨ましかった。



「あったかい…ですか。

だとしたら、どんなに楽しいでしょうね…。」



坂下はそう言うと、俯いた。



「まるで、淋しい人のセリフみたい。」



「ええ、とても淋しいです。」



坂下の口から、そんな言葉が出るとは思わなかった。










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