湖にうつる月~初めての恋はあなたと
「ひょっとして例の男友達?」

尋ねると、亜紀はうれしそうに笑って頷いた。

「よかったじゃない!きちんと自分の思いを伝えられたんだ?」

「そうだね。思い切って自分の気持ちに正直になってみたら、意外と向こうも同じ気持ちだったみたいで、なぁんだって」

「はは、結局そんなもんだよね。亜紀にもようやく春が訪れたってわけだ。安心して辞めれるよ」

栗色の後れ毛が揺れる亜紀の横顔を見つめながら心が温かくなる。

「それはそうと、真琴の方は?澤井さんとは?」

「え、そうだ、報告してなかったよね。亜紀が受付で澤井さんに今私が京都にいるって話した後のこと」

「なになに!?まさか、まさかのまさかだったりする?」

亜紀は大きな目を一層大きくして私の正面で飛び跳ねた。

そうだったよね。私と澤井さんがこうして繋がったのも、亜紀のお陰だ。

あの日、京都タワーで会えてから今日までのことを手短に話した。

「あの時はほんとにありがとう」

「やっぱりそうだったんだ。澤井さんに真琴の居場所教えた途端、腕時計に目をやって血相かわったもの。イケメンは血相が変わったって素敵だったけど、ほんと真琴が羨ましいよ。あんな格好いい人に思われて」

私は恥ずかしくなって笑いながら首を横に振った。

「今度、亜紀の彼氏にも会いたいな」

「もちろん!だけど、澤井さんとは雲泥の差だから驚かないでね」

眉間に皺を寄せながらふざけた顔をした亜紀だったけど、彼女はとても幸せそうな空気をまとっていた。

いくつになったって、恋は恋。

恋しているって素敵だ。そして、いい恋をしているって大事だ。

どんなものにも変えられない原動力になる。

また落ち着いたら必ず会おうと約束をして、私は会社を後にした。

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