湖にうつる月~初めての恋はあなたと
「俺は真琴を傷付けたりしないよ。『抱く』ってことは言葉では伝えきれない俺の気持ちを君に伝える術だと思ってほしい」

彼は優しく微笑むと私の唇にそっとキスをして抱きしめた。

そんな甘い言葉をささやかれて体中が熱くなる。

「・・・・・・嬉しい」

彼の耳元で小さく呟いた。

ベッドの上で私の胸のボタンを外しながら、私のおでこや頬に優しくキスをする。

緊張して体が硬くなった私に「大丈夫。もっと力を抜いてごらん」と微笑む。

少しずつ私の気持ちと体を澤井さんに預けていくような感覚だった。

甘い触れるようなキスと彼の繊細な指が私を彼の愛の海に誘っていく。

ひいては押すような波が何度も訪れ、私達は初めて一つになった。

それは、思っていたよりもずっと温かくて優しくて幸せで全てが終わった後澤井さんの体にぎゅっとしがみついた。

終わってしまうことがこんなにも寂しくて不安な気持ちになるなんて。

「真琴、どうした?」

彼は優しい声でそう言うと、しがみつく私の肩に唇を押し当てる。

しがみつく手が少し震えている。ふとこのまま彼がどこか遠くに行ってしまうような気がしたから。

「始まりがあれば終わりが来るの?」

澤井さんの胸に顔を押しつけたまま呟く。

「ん?」

聞き返した彼に「ううん、何でもないです」と言って笑った。

その夜、初めて同じベッドで一緒に眠る。

とても温かくていつまでもこうしていたいと願わずにはいられない、私の居場所を見つけたような気持ちになっていた。



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