神獣の花嫁~かの者に捧ぐ~

《三》いつかの出逢い

犬朗いわく、死なない程度に電撃をくらった追い剥ぎ男は“眷属”という横のつながりを経由し、闘十郎(とうじゅうろう)へと引き渡されることとなった。

「まっタく、アタクシをこんな辺鄙(へんぴ)な場所にまで呼びつけるナンテ! ハク殿の嫁御は、本トに良ヒご身分ですコト!」

河原に転がった元凶の大男を、鶏より少し大きめの黄褐色の鳥が、げしげしと蹴りながら小言をたれる。
──黒虎(こくこ)・闘十郎の“眷属”、雉草(ちぐさ)だ。

「ん~、この国の治安を守るのも大事なお役目だってコクのじ……いサマから聞いてるぜ?
つか、絶対コレ、雉草のオバチャン褒められるから!」
「……コク様に?」
「そうそう! 『ようやった、雉草。ナデナデ』ってな感じで」
「──分かりマシタ。この一件は、アタクシが責任をもってコク様にお知らせしますワ。心配ご無用! とっとと“神獣の里”なり常世なりにお行きなサイな」

男の上に乗ったまま、くちばしを上げ、雉草は咲耶たちを追い払うように片方の翼を広げてみせた。

「ありがとな、オバチャン。今度、うまいイナゴ食わしてやるからさ!」

調子よく片方の前足をひらひらと振る犬朗の横で、咲耶も愛想笑いを浮かべ河原から遠ざかって行く。

「……闘十郎さんたちって、ああいう(ぞく)みたいなのを捕まえたりもするんだ? 大変なんだね」

感心しながら赤虎毛の犬を見上げれば、前へと向き直った犬朗が笑いをこらえるように片方の前足で口を押さえた。

「いんや? 本来なら検非違使(けびいし)庁辺りの管轄だろ。
コクのじいさんが取り締まるのは、人間(ひと)が手に負えない俺らのような物ノ怪だろうしな」
「えっ、そうなの? 大丈夫かな……」
「ま、だからといって放置するような御ヒトじゃねぇだろ。
こう言っちゃなんだが、ハクの旦那やセキの野郎より、よっぽど自分の“役割”に忠実っぽいしな」

心配になって振り返りつつ歩く咲耶に、犬朗が肩をすくめて応える。

言われてみれば、和彰や(あかね)と違って、年の功ともいうべきか、闘十郎はこの国のことを考えて動いている気がした。
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