愛してるからこそ手放す恋もある
「佐伯さん?担当する小林です」と看護師から声が掛かった。

「よろしくお願いします」

「じゃまず、着替えをしたらナースステーション前で、身長体重を測って来てください」

「はーい」

ナースステーション前へ行き、「誠体重は見ちゃダメだよ!?」

「ええやん!梨華の肉付きの良さなんてとぅに知ってるでぇ?」

「馬鹿!」

これから起こる事など知りよしもない私は、その時はまだ笑顔でいた。

その後血圧を計りナースステーション横の処置室へと案内された。

処置台に横になっていると担当医が入って来た。

「じゃ、始めますね?」

脇、肋骨辺りにチクッと痛みを感じ、カチャカチャと音がする。

説明は受けていたが初めて見る部屋に初めて行う処置。不安が無いと言えば嘘になる。
だが、なるようにしかならない。私は白い天井を見て手を握りしめていた。

暫くしてバッチンバッチンと音がした。

「じゃ、水抜いて行きますから、苦しくなったら言ってください」

苦しくなったら?

淡々と処置を進め、苦しくなったらと先生は言う。

先生にとっては何度も行った処置かもしれないが、私にとっては初めての事。
これから何が起こるか分からない。私には恐怖感しかない。ただ、私は溢れてきそうな涙を必死に堪えていた。

暫くして胸が押しつぶれそうになる。

「苦しい…」

「少ししか抜けなかったけど、今日は止めましょう」
と言って先生は管をペアンで挟んだ。



< 3 / 133 >

この作品をシェア

pagetop