副社長は花嫁教育にご執心
ご両親と初対面
週末の土曜日。昼食の時間帯に、高級なお寿司屋さんで灯也さんのご両親と初対面を果たした。
老舗旅館のような店の作りから上品な和の雰囲気が漂い、私の緊張感ときたら個室までの廊下を歩くあいだ手と足が一緒に出るほどだった。
その会食にて、思いもよらなかった事件が起こる。
用意された個室で、テーブルをはさんで向き合った彼のお父様は、ロマンスグレーの渋いおじさま。……かと思いきや。
「いやー、まさかここまで平凡なお嬢さんと結婚するとは!」
こりゃたまげたとでも言わんばかりに派手なリアクションでのけ反った彼に、私は呆気にとられた。
「ホントねえ。私たちの勧めるお見合いをことごとく蹴って選んだのが、まさかここまで何の取柄もなさそうな、一般人中の一般人という感じのお嬢さんだなんてびっくりよ」
灯也さんによくにた涼やかで上品な瞳をこれでもかと丸くして驚くのは、お母様のほう。
……ええ、私も、びっくりです。ひと通りの自己紹介を終えたあとの最初の発言が、そこまであからさまな嫁いびりだとは。