副社長は花嫁教育にご執心
我慢できなかったって、キスを、ですか……?
そう確認するわけにはいかず、高鳴る胸に手を置いて、気持ちを落ち着かせながら話す。
「あ、謝ることじゃないです……。人目は気になりましたけど……その、嫌なわけではなかった、というか」
「……ありがとな。まったく、まつりの前ではいつも大人ぶってるつもりだけど、ときどき理性が本能に負けるときがあるんだ。それほど、俺の中でまつりの存在が大きくなってるんだろうな」
キスのせいでうるさかった鼓動がやっとおさまってきたところだったのに、たしかな愛情を感じる彼の発言に反応して、再び暴れ出す。同時に、しみじみと深い幸せも感じた。
灯也さん、私も同じ気持ちです。あなたのことを好きになれたら……と望んでいたあの日から、急速に成長したこの想いは、きっと、私の初めての恋。
ときどき苦しかったり、自分がいやになるほど黒い感情が湧くこともあるけれど、全部全部、灯也さん、あなたを想っているから――。
ドライブの間、大好きな彼の横顔を助手席という特等席で独占しながら、私はすでに確信しているそんな気持ちを噛み締め、胸を熱くしていた。