副社長は花嫁教育にご執心
一から全部教えてやる
それから二人そろって帰宅した私たちは、一緒に料理の仕上げをして、ケーキをデコレーションして。
灯也さんが馴染みの酒屋さんで手に入れたという希少なシャンパンで、夜の早いうちから乾杯をした。
「……うまい」
さっそく、遊太直伝牛肉の赤ワイン煮込みを一口食べた灯也さんが、一番シンプルかつうれしい感想を言ってくれた。
「わぁい。よかったです~」
「っていうか、ホントにまつりが作った?」
ええ、そこまで予想外ですか?
彼の半信半疑の眼差しに、むっと頬を膨らませる。
「それひどいです! そりゃレシピは遊太のですけど、これは一から私が作ったんですから!」
「それはすごいな。でもやっぱり、俺の言った通りだっただろ?」
「何がです?」
首を傾げる私に、灯也さんは片手にフォークを持ったまま、したり顔で語る。
「まつりには、伸びしろしかない。初めて言葉を交わしたあの日、俺そう言っただろ?」
……そ、そういえばそんなこと言われたっけ。でもあの時は、灯也さんのこと全然好意的に見てなかった。
私がタイルの補修を台無しにしたからという理由で、結婚を持ち掛けてきた、変なひと。その程度の印象だったのに、まさかこんなに好きになってしまうとは。