副社長は花嫁教育にご執心


「うん。送ってくれるって言うから」

「昨夜一緒にいたってことだよね? 朝帰りってことだよね?」

おおう、質問攻め……。でも、朝帰りって言うのは今回の場合ちょっと違うだろう。

「まぁ……うん。文字通り一緒にいただけだけどね」

変な想像をされてしまうのも困るし、色っぽい展開にはなってませんよーと強調するように話す。

本当は、朝まで手をつないで一緒に起きて、一緒に朝ご飯を囲んでから出勤するという一連の流れが新婚さんみたいでくすぐったくて、そりゃもうドキドキしたけど……。

「ふうん……でも、結婚するんでしょ?」

「情報早いなぁ。もしかして例のメール見た?」

「そりゃお姉さま方が騒いでたもん。私もパソコンの前に呼ばれて無理やり読まされたよ」

お姉さま方、というのは要するに“おばさま方”という意味だ。

職場に私や久美ちゃんのような社員は数名で、あとはパートやアルバイトさんに支えられているのだけど、そのなかでも中年のパートさんは噂好き。

あることないこと派手に脚色して話すから、メールを見た彼女たちの反応を軽く想像して苦笑いが漏れた。

「……やっぱり、悪口的な事言ってた?」

「うーんと、まぁそれもある、かな。まぁ相手が支配人だもん、何か言われるのはある程度仕方ないよ。それより、まつりちゃん最近ミス多いけど大丈夫? 疲れてる?」


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