副社長は花嫁教育にご執心


「……もう、ふざけないでよ遊太」

私はむくれるけれど、遊太の視線はからかうようなものでなく、穏やかに諭された。

「ふざけてないよ。なにも全部男からしなきゃいけないわけじゃないでしょ。告白だってキスだって、その先だって同じだよ。口に出したり、行動で示さなきゃ、相手には伝わらない。こうして悶々としてても、設楽さんには姉さんの不安がわからないんだから」

「……そういうもの? 灯也さんは、いつも何も言わなくても私の考えてることわかってくれる気がするけどな」

「それは気がするだけだよ。姉さんのことを観察して、何を求めてるのかなって予想することならできるでしょ? それがたまたま今までは外れてなかったってだけで、本当は姉さんが伝える努力をするべきなんだよ」

うむむ……我が弟ながらなんて生意気。でも、納得できることを言うんだよなぁ。たまに、どっちが年上なのかわからなくなるくらいだ。

伝える努力、か……。確かに、いつも“こうしてほしいな”って、心で念じるばかりだ。

灯也さんも、ホントはそれを口に出してほしいのかな。


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