嘘つきお嬢様は、愛を希う

甘えたくない






「予想していたよりも早かった、ってところか」



下校途中に思わぬ奇襲を受けた晩、いつもの幹部室にて幹部会議が行われた。


参謀担当の櫂さんの疲れたような呟きに、天馬が戸惑いを含んだ瞳を揺らす。



「早かったどころじゃないっすよ。桐姉が華鋼のヤツらとやりあってから一日しか経ってねぇのに」


「全面戦争間近のこの状況で、うちに弱点があるとわかれば狙ってくるのも頷けるよ。向こうにとっちゃ、昨日のは願ってもみない収穫だったんだろうね」



櫂さんの代わりに答えた風汰先輩は、言葉通りに神妙な顔をしながらも、手元では洗い終わったお皿をせっせと拭いている。


器用だよね、風汰先輩は……。


手伝いますね、と進み出ながら、私は今日の出来事を思い出して小さくため息をついた。


分かってはいたことだけど、ここには『平穏』という言葉はないのかもしれない。

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