【完】キミさえいれば、なにもいらない。
「あっ、噂をすれば!」


するとそこで、璃子が何かに気が付いたように、再び大声を上げて、急に教室の外を指差した。


「雪菜、王子様のお出ましだよっ」


「えっ、なに?」


言われて彼女が指差すほうを見てみると、そこには一ノ瀬くんの姿があって。


いつものように教室を訪ねてきたみたい。


「それじゃ、邪魔者はあっち行ってるね~」


璃子はそう告げると、そそくさと自分の席へと戻っていく。


そして、それと入れ替わるようにして、一ノ瀬くんが私の席までやってきた。


「雪菜、おはよ」


笑顔で声を掛けられ、私も返す。


「おはよう」


すると、一ノ瀬くんは私の姿をじっと見るなり、目を大きく見開いて。


「あれ?雪菜、その髪……」


< 149 / 370 >

この作品をシェア

pagetop