【完】キミさえいれば、なにもいらない。
「彼方って呼んで」


ニコニコしながら顔を覗き込まれて、ギョッとする。


「よ、呼び捨ては無理っ!」


「じゃあ、“彼方くん”でいいよ」


「わ、わかった……」


ちょっと恥ずかしいけど、くん付けなら呼べるかな。なんて思ってたら。


「呼んでみてよ」


さっそくそんなことを言い出す彼。


「えっ、今?」


「うん」


ちょっと待ってよ。どうしよう。


いざ名前で呼んでみるとなると、結構恥ずかしいんだけど。


「か……彼方、くん」


ぎこちないながらも口にしたら、その瞬間かぁっと顔が熱くなる。


あぁ、ダメ。やっぱり男の子のこと名前で呼ぶのって、恥ずかしいよ。


恐る恐る彼方くんのほうへ視線を戻す。


すると彼は、なぜか目を見開いて、顔を真っ赤にしていて。


……あれ?


< 171 / 370 >

この作品をシェア

pagetop