【完】キミさえいれば、なにもいらない。
思いがけないことを言われ、ギョッとして目を見開く私。


「はっ……?」


何言ってるの。っていうか、なんで急に下の名前で呼び捨てになってるの?


「俺さ、雪菜と仲良くなりたいんだけど」


続いて彼の口から飛び出してきたその言葉に、私は唖然として一瞬固まってしまった。


いや、ちょっと待って。なにこの人……。


昨日のお礼を言ってハンカチを返してくれたのまではいいけど、これじゃまるで、ナンパだよね。


ただでさえ苦手なタイプだと思ってたのに、ますます警戒心がわいてくる。


チャラ男だって噂、やっぱり本当なんだ……。


「え、いや……私はべつに、仲良くなりたくないです」


すかさず断ったら、一ノ瀬くんは、キョトンとした顔で聞いてきた。


「なんで?」


「なんでって……あなたのことよく知らないし」


「じゃあこれから知ってもらえばいいよ」


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