【完】キミさえいれば、なにもいらない。
「あの隣にいる人が彼女なのか~。確かに美人だわ。でも、私てっきり遠矢先輩は雪菜のことが好きなのかと思ってたから、他の人と付き合うなんて意外だったな」


「えっ!」


思わぬことを言われて、動揺する私。


「な、何言って……っ」


「だって、一時期雪菜と遠矢先輩すごく仲良かったじゃん。学校でもよく話してたしさ。私は結構お似合いだと思ってたんだけどね」


璃子の言う通り、確かに私は一時期陸斗先輩ととても仲が良かった。


でも、それはもう過去の話だ。


今はほとんど話すこともない。


「そ、それはただ、お兄ちゃんと仲がいいからだよ。前はよくうちにも遊びに来てたし……。でも最近は全然来なくなったし、そもそも陸斗先輩は私のことなんて、絶対に何とも思ってないから……」


自分で言いながら、胸が苦しくなる。


だけど、それを顔に出さないように必死で取り繕ったつもりだった。


< 57 / 370 >

この作品をシェア

pagetop