3月生まれの恋人〜first christmas〜
俺を脅す格好のネタを手に入れたせいか、夕方、泉はやたらと上機嫌だった



『家族団欒のクリスマスの邪魔だから帰れ』



幸か不幸か、ビデオ上映会にもならずに済み、ちょうど六時を回る頃、俺は兄貴のマンションを後にした


はあっ、とため息が零れる・・・


あれ?俺なにか忘れてないか?

そう考えて、とんでもないことを忘れていた自分に気がついた!



『クリスマスデートっ!!』



マンションへ戻りかけていた足を回れ右させ駆け出す

時間も場所も約束してないデート

まだ、幼稚園にいるだろうか?

必死で走って幼稚園まで戻り、さりげなく園庭から中を覗く



『あ・・・』



いる・・・

灯りのともるさくら組、あのシルエットは彼女だと思った



『待ってみるか』



今日はホントに疲れたけれど、まだ神様は俺を見捨てた訳じゃあないらしい。

とりあえずメシでも誘ってみるか

悪いけど、五歳児に負けるわけにはいかないし?

小さな息さえ白く変わる寒空の下、俺はいつ出てくるとも知れない彼女を待って空を仰いだ
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