トラウマの恋


「家どこ?」

運転しながら言う圭斗くん。

「あっ、××駅でお願いします!」

「いいって!家まで送るから」

駄目だ、家に来たら何のために
引っ越したか分からない。
新しい家に彼との思い出を作りたくない。

もう忘れたい。

「駅のスーパーで買い物して
帰ろうと思ってるんで。
ほんとに大丈夫です。
ありがとうございます。」

と言うとしぶしぶ降ろしてくれた。

「今日はありがとうございました!
髪の毛めっちゃいい感じです。
やっぱり上原さんの技術はすごいですね!
気を付けて帰って下さいね! 」

これは本音。
彼のことは本当に尊敬してるし
そのことをきちんと伝えたかった。


「はいはい、気を付けてな!
ありがとなー!」

と目を逸らす姿に照れてるなと思いながら
何も言わず車を見送った。
< 21 / 50 >

この作品をシェア

pagetop