君と恋をしよう


新婚夫婦ならこんなものだろう、くらいで夫婦生活は営んでいた。

いつからだろう。

彼女が苛立つようになった。

会社で嫌な事があったようだ、僕に当たる事はないが「どうかした?」と聞いても「なんでもない!」と怒鳴られる。

そして、夜な夜な、体を求められるようになった。

僕ももう30代半ば、そうそう性欲は、ない。いや、まあ、個人差はあるだろうが。

ストレス発散かな?と僕はできるだけ付き合うようにはした、一回でも僕がいけば、納得はしてもらえる。自分が気持ちいいとかはとりあえずいいようだった。

それでも辛い時もある、たまたま残業が続いた日にも「しよ」と言われ、さすがにげんなりする。

この頃からだ、遠回しに断るようになったのは。
それに彼女が気付くのはそんなに遅くない。

「どうして!? 夫婦でしょ!? 夫婦なら……!」
「今日は勘弁してよ、さすがに疲れたよ」

すんなり諦めてくれる時もあれば、怒って寝室に入れてくれないこともある……どうしたんだろう?とは思う。

交際していた頃は、とにかくエッチがしたいと言う雰囲気ではなかった、今はとにかく入れてくれ、と言外に言っている。

さすがにソファーに座らせて話し合いをした。

「どうしたの? 何か悩みがあるの?」
「悩み……ね」

彼女は歯を食いしばりながら言った。

「子供が欲しいのよ。私ももう29よ? 30過ぎると妊娠しにくくなるって言うし。子供とあなたの帰りを待つ暮らしをしたいわ」
「そっか……仕事なら今すぐ辞めてもいいよ。貯金崩せば君が負ってしまった返済分はカバーできるよ」

でもそれは取っておけと言ったのは彼女だが。
彼女は「はっ!」と笑った。

「言ったでしょ、結婚の時、仕事を辞めたいって言ったら「君みたいな優秀な人材を無くすのは我が社の損失だよ! いてくれ!」って言われたのよ。また同じ事を言われるのは嫌だわ」
「そっか……」

現に彼女の営業成績は未だにトップだ。

「子供でもできれば、と思ったのよ。それこそ『女の武器』よね」
「……判ったよ」

何事にも手を抜かない彼女らしい、きっと皆に祝福されて退職したいんだろう。

その夜は彼女を抱いた、愛そうと思ったが無理だった、適当に勃ったところで彼女に入って吐精した、彼女は満足して眠った。



考えてみれば、そんなに子供子供言うなら排卵日の前後だけ、義務のようにすればいいのではないのか?



現に彼女は基礎体温を付けている。
でも、何故妊娠しにくいと言われる高温期にまで行為を求められないといけないんだろう?
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