君と恋をしよう
僕が愛した女性は、やはり素敵な人だったと。頑張りすぎてタガが外れてしまっただけだと判ったからだ。

もし、それにお互いが、いやどちらでももっと早く気付いていたら、どこかで修復もできただろうに。あるいは少し我慢して過ごせばトンネルを抜けるが如く道が拓けかもしれない。

でも僕達は別々の道を歩み始めた、彼女は別の幸せを掴むだろう。
僕もただひたすらに、今度こそは愛しい人を守り続けよう。

一陣の風に寒さに感じて思わず足を早めた時、視界に白いものがちらついた。

雪だろうか。

思わず空を見上げた、暗い空から雪はちらりほらりと落ちては来るが、初雪と観測されるほどではないかな……?

その時、ふと自分のマンションが目に入った、カーテンの隙間から明かりが射している。
萌絵には年明けに帰って来た時に合鍵を渡していた、部屋で待ってくれているのかな。

思わず歩くスピードが上がった。

玄関を開けると、可愛いパンプスがきちんと並んでいた。

「おかえりなさい!」

元気な声がした。

「勝手上がってごめんね」

合鍵を渡したと言う事はいつでもどうぞと言う意味なのに。

「あのね、今日、竹内先輩と華先輩と、中華まん、作ったの」

今日は萌絵の会社は休業日になっていたのだ。

「へえ? 生地から?」
「うん、竹内先輩が、発酵器を買ったから、作ろうって。いっぱい作ったからね、たっちゃんとも食べようと思って」
「夕飯に肉まんか、いいよ」
「あんまんも作ったよ、ピザまんとかキムチまんとかハムまんとか」

あ、アグレッシブなのも作ったんだね、味見はしたのかな?

「今、春雨のスープ作ってるの、もう食べる?」
「うーん、中華まんもいいんだけど」

僕は小首を傾げて提案した。

「今、少しだけど雪が舞ってたんだ。よかったら散歩でもしない? 萌絵は雪なんか見慣れてるだろうけどさ」

言うと萌絵を顔がぱっと明るくなった。

「ううん、行く! 火を止めてくるね!」
「あ、春雨、のびちゃう?」
「まだ入れてないから大丈夫!」

萌絵は慌ててキッチンに戻り、コートを手にして部屋の電気を消して玄関へやって来た。

「萌絵は雪なんか嬉しくないでしょ?」

あんまり嬉しそうなので言ってしまった。

「うん、雪は大変だから好きじゃないかな。でもたっちゃんが誘ってくれたなら嬉しい」
「僕も嬉しいよ」

手を繋いでマンションを出た、有り難いことにまだちらちらと雪は舞っていた。

萌絵は嬉しそうにそれを見上げていた、僕と見る雪はまた別の物なのだろうか、そうだと嬉しい。



この笑顔を。



この先もずっと僕の隣で見られたらどんなに幸せだろうか。

「──萌絵。明日は桜木町で待ち合わせして、ご飯でも食べに行こうか」
「うん! でもなんで?」
「別に理由は……なんとなく、気分で」
「うん、全然いいけど」

萌絵は繋いだ手に、きゅっと力を込めてくれた。

したのは明日の約束、でもいつか、ずっと未来の約束までできたらいいな。

いつまでも、君を、独占する約束を。





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