復活!みちのく助産院だより。~私達、大人になりました~
ア・ベマリア
アベマリア。キリストを処女懐胎で身ごもり、この世に誕生させた女、アベマリア。
あだしとしては、頭の中が?よ。不思議なこともあるのね。先日、廃墟と化した助産院に見知らぬ女が1人待合室で静かに待っていた。やっと気づいたあだし。受付もしないから名前をお呼びするわけがないわ。
「あなた、何?」
診察が終わったかと思ったら、とんでもない女を見つけてしまったあだし助産院。少しばかりお冠状態だったからこの口調。
「調べて欲しい。」女は、か細い声であだしに言ってきた。診療時間は終わったけど、診てやることに。この女、名はア・ベマリア。どこかで聞いたことがある名前のような感じがしたけど、その時は思い出せなかった。「ベマリア様、それでは横になってください。」
って、言ったら
「その必要なくってよ」
なんなの、このいいぐさ。普通あだしに従うでしょ!
そう思った瞬間、女は何を思ったんだか、バーキンのバックからタウンページを出したわ。今日もジャスミンティーを出すべきだったのかしらと反省しているあだしに対して、女は「ここ、載ってないわよ」
なんなのいったい。あんた、妊娠検査に来たんじゃないの?タウンページに助産院が載ってないことをわざわざ言いにきただけらしい。
その女が帰る後ろ姿には、明らかに着ぐるみのファスナーがあった。
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