だから何ですか?Ⅱ【Memory】
案の定しつこかったな。
そんな事を思いながら足早に従業員出入り口から店内に抜けて、腕時計を確認しながらエスカレーターに。
大人しくその身を預けるわけじゃなく、動く階段をカツカツと歩き進めて下段する。
挨拶も終えて片付けも終えて、当然の様に『打ち上げだ』と絡んでくる井田に『疲れた』『面倒』だと言い訳並べて逃げようと躍起になっていれば、『私がつきあいますよ』とまさかな感じに小田の助け舟。
それでも嫌味たっぷりな笑みで『飲みたい気分なんです』と言葉を続けた事には苦笑いしか浮かばなかった。
何にせよそのおかげで隙を見て逃亡成功したわけで、そのまま捕まらぬように足を急がせ待ち合わせの一階へとその身を動かす。
ワイン専門店と言っていた。
このデパートにテナントとして入っているそこは有名だから俺も知っている。
来たことはないから案内板を見てからその場所を探して突き進んで、ようやく見つけたその店はしっかりと壁やドアで仕切られた少しシックで高級そうな佇まいを見せている。
木製の扉に手をかけ押し開ければカランと呼び鈴のベルがなって、中からは保たれた少し冷たい空気が溢れてきて、店内には小さく静かなBGMが流れている。
どうやら試飲も出来るらしく小さなバーカウンターの様なモノもあって、温度調節された環境下の棚には様々な種類、産地、銘柄のワインボトルが並んでいる。
決して大きくないその店内で目的の人間を探すなんて事はたやすい。