昼休みが終わる前に。
【第9章】最期のプレゼント




♢♢♢♢♢


次の日、喉が渇いて目が覚めた。カーテンの隙間から差し込む鋭い日差しが、床に白い線を走らせている。


スマホの待ち受け画面を確認すると、時刻は11時9分だった。


こんな時間になるまで一度も起きないなんて、かなり深く眠り込んでいたみたいだ。


久しぶりの人混みだったから、疲れちゃったのかな。


私は部屋を出て一階に向かった。冷蔵庫の中から麦茶を取り出し、コップに注いで一気に飲み干す。


家の中はしんとしていて、二階で時折鳴っている風鈴の音しか聞こえない。


この静けさには慣れているはずなのに、昨日の夜ずっと賑やかな空間の中にいたせいか、淋しさのようなものを覚えた。



音が欲しくなって、私はリビングの窓を大きく開け放った。


外の音や匂いとともに、軽やかな夏の風が入ってきて、白いレースのカーテンを揺らした。昨日お母さんが洗ったのか、カーテンからふんわりと石鹸のいい香りがした。



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