窓際の君と、
2
脆く儚いものは綺麗だし、今にもなくなりそうなものに人は惹かれる。俺だってそうだ。
今日もこの狭い教室の中でひときわ目を惹く彼女のことをぼんやり見つめていた。他の人間なんてまるで居ないんじゃないかって程に目が離せない。机にうずくまって寝た振りで自分の髪と腕の隙間からその横顔をうっとりと眺める、一度も染めたことのないであろう黒髪が絹のように柔らかく身体の曲線にそって流れていた。その髪に触れてみたいと思ったが、どうせならその薄紅色に染まった頬の方が突っついてみたかった。こんな変態じみたことを考えるほどに俺は田原に夢中になっている。
今すぐ自分の気持ちを伝えて田原の全てを自分のモノにしたかった。けど、そんな簡単にはいかないものだってことくらい俺だって分かってる、田原の纏う妖艶な雰囲気に惹き寄せられた男は数多くいた。そして、その中の誰一人として田原に気持ちを伝えて想いが実った者がいなかったんだ。
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