大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
私は首を振った。

「違います。
私はハヤと夫婦になるんです。
ハヤだったら、こんなに苦しい思いは
しないから、いつも穏やかに幸せに
過ごせるから、ハヤの所へ帰してください。」

「それは恋じゃない!
アヤが本当に恋しいと思ってるのは、俺だ。」

私は、大王の腕の中で首を振り続けた。

「俺はアヤを離さない。
アヤが自分の思いに気付くまで、
ずっとここにいさせる。」

大王はそう言って、私を抱きしめる手に力を込めた。

どれ程の時が経ったのか、しばらく経ってから、大王は腕を解(ほど)いて立ち上がった。

「さ、遅くなってすまなかった。
夕餉を食べてしまおう。
アヤも腹が減っただろう?」

大王はそう言って、自分の膳の前に座った。

今日の夕餉も、全く味がしなかった…
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