大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
「大王にそのように思っていただけるのは、
とても嬉しいです。
以前は、大王の側にいるのは苦しいばかりで、
いつも逃げ出したいと思っておりました。
ですが、近頃は大王の側にいられるのは、
苦しい時もありますが、とても心地よく
感じる事が多い気がします。
なので、もし、大王にそのように思って
いただけなくなったら、寂しく感じるのでは…
と思います。」

私がよく分からない気持ちを吐露すると、大王は、

「それは俺を愛しく思ってくれていると
いう事ではないのか?」

と尋ねた。

「分かりません。
少なくとも、嫌いではありませんが、
愛しいかと問われると、自分でもよく
分からないのです。」

「ふふ
違う…と言われなくなっただけでも、
今は良しとしよう。」

大王はそう言って笑った。


私たちは夕餉をいただき、夜の庭園を散歩した。
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