大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
私は思わず、大王の背にしがみついた。

大王は私の頭を支えて、そのまま私を横たえた。

大王の口づけが額から瞼に頬に降ってくる。

そして耳に口づけられ、

「あ… ん… 」

知らぬ間に声を漏らして、身を捩る。

そのまま首筋に口づけられ、同時に胸をまさぐられる。

私は慌てて、大王の手を握るが、止められない。

「大王、約束が…」

言いたい言葉は、口づけで塞がれて飲み込まれる。

大王の手が裳裾(もすそ)から這い上がって来た時、涙が溢れた。

「大王、嫌です。」

その瞬間、大王の手が止まる。

「大王、私はまだハヤを忘れてません。
ハヤを思いながら、大王に抱かれるのは
嫌です。
私は、大王だけを想いながら、大王と
結ばれたいのです。
大王の真心に、不実な私で応えたくは
ありません。
どうか、もうしばらく、私が大王だけを
想える日まで、もうしばらくお待ち
いただけませんか?」
< 81 / 147 >

この作品をシェア

pagetop