忘れられない君との夏。
5日目


朝目覚めると、お母さんが昨日出してくれた浴衣が目に飛び込んできた。


紺色の生地に、赤や白の牡丹の花が散りばめられている、かわいいデザインだ。


なんだかにやけが止まらない。


「にやけてないでさっさと支度しなさい!」


「ひっ!」


いつの間にか部屋に入ってきたお母さんは、そう言って部屋の窓を全開にする。


「分かってるよー」


私はベッドからおりて制服に着替え、髪をとかす。


顔を洗って、リビングのいつもと同じ席に座り、パンをかじっていると洗濯物を干し終えたお母さんが私を見てにやけ始めた。


「…なに?」


「今日のお祭り、洸ちゃんと行くんでしょ」


飲んでいた麦茶を吹き出しそうになる。


「なっ!なんで知ってるの!」


「聞いたわよ?補習、洸ちゃんとしてるって」


私はこの町の狭さに久々にうんざりする。

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