目を閉じたら、別れてください。

笑ったけど、後ろから抱き着いてきた彼の体温に頑なな心が溶けていく。

私一人が意地を張ってバカみたいに思えてくる。

「で? なにがあんの?」
「何もないけど、強いて言えばウエディングドレスを着たくないのかな」
「は?」
「だって可愛いじゃん。私って目立つこと嫌いでしょ。結婚式で皆が私のドレス姿を見るかと思うと、胸がキリキリする」
「……そう」

彼の声から緊張が抜けていく。
そんなことかよ、と言いたげな雰囲気に笑いそう。
私の鼻が伸びたのを、きっと彼も気づいていない。

「ドレスが着たくない、か。やっぱ結婚式の準備で疲れがでてんだろ」
「出てないよ」
「お前のドレス姿は俺がきれいだと保証する。が、着たくない理由に恥ずかしいとか面倒だとかあんのなら、結婚式を億劫だと思ってんだろ。もういっそ、海外で身内だけですますか?」
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