目を閉じたら、別れてください。

「何かあったんですねえ。マリッジブルーかな」
「……どうでしょう」

曖昧に返答するけど泰城ちゃんは食い下がってくる。

「二次会参加者の、会社の人たちの幹事は私なんですよお。いいんですかあ、上司呼んじゃいますよ」
「すいません。ちょっと嘘をついてしまいました」

一言で言えるような簡単なことではないのに、ついそういってしまった。

嘘ではないが、真実とは違う。

「あれ、先輩って前にもひどい嘘ついてましたよね? 今度はどんな嘘?」
「どうせここまで式の準備が進んだら、むこうだって破棄できないよな。苦しめ!って嘘」

「わあ。さいてー。彼の反応は?」

「覚えていない」

覚えてないしどうやって家に帰ったかも覚えていない。
ただ今週の水曜、20時から式場でギフトの展示会がある。
来てくれた人に渡すギフトと、式の終わりに手渡すギフトとか、簡単なゲームのプレゼントセットとか。
食べ物は全部試食できるから楽しみだったのに、気が重い。

「で、嘘ついて、そのあとはどうするんですか?」
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