目を閉じたら、別れてください。


「そう、なのかな」
ただ、残ったこの虚無感というか、空しい気持ち。

好きな人を傷つけても、その一瞬だけ清々するだけで今は後悔しているのかもしれない。
嫌われていいから言いたかったわけじゃない。
ただ傷ついてるのを、相手に伝えたかった分かりにくい意思表示。

きっとあきれている。私だってバカなことをしたってわかってる。

分かってるけどあの時は、自分の傷を守るのを優先してしまったんだ。



食欲もわかなくて、お昼ご飯は珈琲を飲んでいた。
隣で泰城ちゃんが駅前に新しくできたカフェの、ロコモコ弁当を食べていて可愛いなあと眺めつつも食欲はわかなかった。

『桃花、今、電話してもいいかな?』

震えた携帯の画面には、進歩さんではなく叔父さんからのメッセージだ。

泰城ちゃんに断りを入れ、裏口から出て電話をした。

『休憩中にすまない。今日は予定あるかい?』
「ないけど」
『うちの親戚の招待でさあ、お爺さんが人数増やしたいって言うんだ。ややこしい関係だから個室で説明するから、今日近くで話せないかな』
「いいよ。じゃあ昨日買った新作の漫画も持っていく。場所はどこ?」
『私の知り合いのBARの個室を借りるよ。マジックBARなんだ『倫』ってとこ。あとで店の地図を送る』
「うん。分かった」
マジックBAとか、また叔父さんも面白いところを知ってるな。
ちょうどいい。叔父さんに詳細は省くけど、彼とのことを言わないといけない。


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