青い僕らは奇跡を抱きしめる
 本当は楽しかったのに、ちっぽけな『プライド』に逆らえず本心を隠している自分が情けない。

 そんな俺を素直に兜が慕うから、余計に面映ゆく感じた。


「お兄ちゃん、明日も遊びに来てよ」


 兜はもっと遊びたいと誘ってくれたが、俺は葉羽の様子を窺いながら曖昧に「ああ」と返事をした。

 やはりまた葉羽と一緒に遊ぶのはなんだか気恥ずかしい感じがしたし、俺は素直になれるタイプじゃなかった。

 プライドも高く、どこか捻くれて、人が優しく接してくれてもわざとつれない態度を取ってしまう。

 それなのに、構ってもらえるとどこか嬉しいと感じるところもあるから、自分でも訳がわからなくなってしまう。

 葉羽はどう思っているのか様子を探れば、まだぼんやりとした表情をしていた。


 葉羽が大事に抱えていたサボテンも同時に目に入ったが、最初に見たときと少し何かが違っているように見えた。


 そのサボテンにすでに咲き切ってしまった萎れた花がついていたからだった。


 花なんて咲いていただろうか。


 球体のように丸くそれが上半分だけ土から出たようなサボテンだから、もしかしたらさっき見えなかった裏側だったのかもしれない。

 かなり枯れかけているようにもみえて、やはりもう寿命尽きて枯れていく運命のサボテンなのだろう。


「なあ、そのサボテンさ……」


 俺が枯れるかもしれないと言おうとしたが、葉羽はその先を聞きたくないと言いたげに遮った。


「このサボテンは大丈夫。これから奇跡が起こるから」


 葉羽は絶対に枯れさせたくなかったのだろう。

 強くそういいきって、そして俺の目をじっと見つめた。


「さっきから、挑戦的な目で俺をみるけど、俺なんか怒らせたのか?」


「えっ、そんなことない。あの、やっぱり明日も一緒に遊ぼう」


 葉羽からもそう言われると俺は「わかった」と自然に返していた。


 そして俺がここに滞在している間は、ずっと葉羽と兜と過ごすことになった。

 それは成り行きでそうなったことにしながら、俺は内心一緒にいられることが嬉しくてたまらなかった。

 でもサボテンを手にしてから、どこか葉羽は俺を見る目つきが違っていた。

 何かに怯えるように、俺を心配して、時折り目に涙が溜まるように潤んでいる瞳をしていた。
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