青い僕らは奇跡を抱きしめる
 それから年が明け、俺はまた伯母の下で過ごすこととなったが、その年のスタートは最悪の始まりとなった。

 母の再婚話がなかったことに消え去ってしまったからだ。


 それを聞いたとき、俺はなんだかほっとしてしまったが、結婚話が流れた経緯を知ったとき、俺は腹が煮えくり返った。


 俺が怪我を負わせたあの生徒の父親は、その街でも顔の効く権力を持った奴だった。


 俺の母親が近々再婚する事を知り、その相手の事を調べ上げ、そして弱小会社だと知ると、その取引先に手を回し、あの社長の結婚相手には不良の息子がいて、そんなところと取引をするのは良くないと噂を流したからだった。


 それはすぐに母の恋人、西鶴の耳に入り、なんとか取引を続けてもらおうと画作を立てた結果、母との再婚はなかったことにしてくれという事になったのだった。


 俺はこの結婚には表向きは賛成のフリをしていたけど、本心は確かに乗り気ではなかった。


 しかしこんな結果になってしまい、婚約破棄だけじゃなく、母もその会社に居られなくなり、事実上の解雇となったことは悔しすぎる。

 お陰でこの先の生活が益々不安になってしまった。

 一体どこまで俺は追い詰められるのだろう。

 正しいと思っていても、なぜ暴力を振るう、力を持ったものに征服されなければならないのだろう。


 俺はひたすら自分は悪くないと母親に訴えたかった。

 それでも結果があのような形になってしまい、訴えても虚しさが広がるだけだと思うと俺は何も言えなかった。


 母もまた直接俺には何も言ってこなかったが、普段口やかましいのを知っているだけにどこか覇気のない姿を見せられると、それが落胆して声も出ない弱った状態ということが容易に想像つく。


 俺が犯した罪よりも、そのように導いてしまった自分のふがいなさを責めるように、影で一人泣いていたと思う。


 俺は母親の幸せも壊してしまった。
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