難病が教えてくれたこと
「お前、男のくせに情けねえなあ」
「うっせ!俺はまだまだこれからだ!」
「どーだか」
中矢家の兄弟はほんとに仲いいなあ。
私と美那も負けてないけどねっ!
「李那、ここにいろよ、荷物持ってきてやるから。」
「あ、私が行くよ!行くよ!風雅!」
裕くんが動こうとすると、美那が再び一目散に駆け出した。
初等部の奴が高等部の所まで行くの勇気あるのに…
「李那の妹、元気だな。」
「うん、あの子に遺伝してなくてよかった…ほんとに…」
ALSが遺伝してるのは私で止めたい。
如月家のこの病気は私が止める。
その為には裕くんにも別れを告げないとなあ…
寂しい。
「ん?どうした李那?」
「んーん!何でもない!」
「そうか」
ごめん裕くん…
こんな弱い女で…
私だって健康体で生まれたかった…
普通の生活して普通に遊んで普通に裕くんとデートして…

普通の女の子として生まれたかった。

何でこんな病気なんだろう。
それでもここまで生きてこれたのはお母さんやお父さん、美那や裕くん、蒼空と海澪…
私の周りの人たちのおかげ。
ありがとう、皆…
【如月李那side END】

【中矢裕side】
「お姉ちゃん、荷物」
「ありがとう美那。」
俺の隣で座り込んでいるのは彼女の李那。
昔からよくコケたりする子だった。
幼馴染の俺はよく一緒に遊んでた。
あの大会の時だって病院に付き添ったのは俺だ。
医師の口から病名を聞いた時の李那の顔を俺は忘れることが出来ない。
だってあんな顔、見たことなかったから。

何もかもを諦めた、何も無い顔。

もうあんな顔、させたくない。
だから今回俺は李那もリレーに出させた。
「久しぶりに走った感想はどうでしたか?姫?」
「何いきなり気持ち悪い。
んー…そうだなあ、気持ちよかった」
「だろ?
李那が教えてくれたんだもんな、走ると気持ちいいってこと。」
最も俺は短距離じゃなくて長距離なんだけど。
さっき追い上げた4組は俺だ。
短距離のエースには勝てないわ。
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