難病が教えてくれたこと
まだまだ鍛えているからな。
風雅も重くなったけど、これくらいならおんぶ出来る。
「…サンキュ、兄貴…」
ぼそっと聞こえないように言ったつもりだろうからあえて返事はしない。

病院に着くととりあえず保険証云々を出す。
しばらく待ってると呼ばれた。
風雅のレントゲンを撮るらしい。
李那がお世話になってる病院だから看護師さんもお医者さんも顔見知りだ。
「あら、裕くん、李那ちゃんなら居ないわよ?」
「知ってますよ。今日は弟です。」
前を通り過ぎていく看護師さんに笑顔で返していく。
話しているうちに風雅の結果が出たのか俺も呼ばれた。
「単刀直入に言うと風雅くんの肩は脱臼、腕は骨折。足は本当に小さいヒビが入ってる。
顔は今、見ての通り手当させてもらった。」
やっぱり腕はアウトか。
「なるべく家で安静にしてる方がいいだろう。」
「分かりました。」
この腕の状態からしてなるべく動かさない方がいいかな。
本人は動きたいだろうけどな。
仕方ないな。
治るまで我慢だ。
会計を済ませて俺は風雅をおぶって家まで帰る。
「風雅っ!!」
「あっ、美那…」
家の前ではガーゼを貼った美那ちゃんが待っていた。
部屋着の様子から見てお風呂は入ったらしい。
グレーの部屋着を着ている。
「ごめんね、痛かったよね…っ」
「美那のせいじゃない。」
…おぶられてかっこいい事言ってる。
「それにあんまり痛くねぇし!」
俺は静かに風雅を降ろす。
本人は普通に立っているが体の重心は右だ。
左に負担をかけないようにしているんだろう。
「ごめんね、風雅っ…」
「俺はいいの!
俺こそごめんな、女の子なのに顔に怪我させちまって…」
「…」
「ごめん、美那」
あれ?もしかしてもうこの2人出来てるの?
風雅の左腕を見て涙を流す美那ちゃんを横目で見ながら俺は家の中に入る。
診断結果と請求書を机の上に出しておく。
家に帰ってきたら母さんが見るだろう。
その後で金は帰ってくるはずだ。
…それにしても。
あの陸上教室でそんな事件があったなんて。
…考えたくはないな…
俺と李那もあそこで鍛えてもらったし、…そんなこと思いたくない。
逆恨みだろうな…きっと。
ーピンポーン
外に風雅いるから何とかしてくれんだろ。
まあいいや。とりあえず覗いとこ…
…おお、来てくれたのか、宮野先生。
俺らが世話になってた、陸上教室の先生。
…行って、話を聞こうではないか。
「宮野先生。」
「…裕、くん?」
外で風雅に頭を下げていた先生。
とりあえず中には通したけど、なかなか先生は話してくれない。
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