重なった社会~Ivy with little spider~
頭皮が階段の平面に触れる直前、河内は自分を転ばした人物を見ることができた。


ベンチコートのような上着を羽織り、フードを目深にかぶっている。

体躯はオキと同じぐらいで、背は160cm弱だろうか?
ただ、袖から見える腕は体躯に釣り合わないほど細い。

あの細腕で己を押したのであれば、それなりに力はあるのだろう。


頭皮が階段の平面に密着したとき、フードの下の顔を僅かながらに拝むことが出来た。


……なんだ、ネカマじゃねーじゃん……




グギリ、と首の付け根から音がした。

かつて河内雄介という名だったモノは、其のまま転がるように螺旋階段を下り始めた。
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