きらきら
きらきら
わたしは内気な部員が多い写真部の中でも、一段と無口で無愛想な人間だ。


特に他人から自分の写真のことをどうこう言われると、よっぽど腹が立ってすぐに席を立ってしまう。


唯一の趣味である写真は、どれもこれも風景ばかりで、人が写っているものは一つもない。


そんなわたしの写真が某新聞社の写真コンクールで最優秀作に選ばれたのは、つい先月のことだ。


周りは一重にその写真を見て綺麗だというけれど、わたしが求めている写真はもっと芸術的で、刹那の美を写し込めたものなのだ。


風景は確かに季節の流れに乗って移り変わってゆくものだけれど、その瞬間の美しさは持ち合わせていない。


コンマ一秒の芸術。


そんな写真を撮りたくて、わたしは今日もこうしてあてもなく、首から今時珍しいフィルム一眼レフのカメラをぶらさげて、学校周辺を遊歩していた。


小川に沿って走っている並木道をゆっくり歩いていると、秋の匂いがしてくる。両脇に植えられた楓の木は、一本残らず紅葉しきっており、道には楓独特の落ち葉が降り積もっている。


それを眺めていると心の中で何かが疼きだして、思わずわたしはカメラを構えた。


アングルを決めて次々にシャッターを押していく。さっきまで目に映っていた風景が、一枚の写真に写し籠められていく。


道脇にある楓の落ち葉。軽くしなって手の届く距離まで伸びてきている葉をよくつけた梢。


どれもこれも綺麗ではあるのだけれど、なかなかどうしてわたしの心にすとんと落ちてくれるものが写らない。


これも駄目、また駄目、わたしは心の中で自分が撮った写真に文句を付けつつ、あらゆるアングルを試していった。


そこから何枚か撮ったあと、ちょうど反対側の並木を写そうとして振り返ると、レンズに一人の青年が写り込んだ。わたしはむっとしてファインダーから目を離したが、その青年が手に持っているものを見て、目を見張った。
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