なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 曙光は、あまりに心臓が激しく鳴るので余裕がなくなり、酒が用意されている部屋に一目散に向かった。


 前回よりも緊張している。


 朱熹の顔がまともに見られず、早く酒を呑んで気持ちを落ち着かせたかった。


 その分朱熹は慌てず、曙光の後に続いて部屋に入ると、優雅な所作で酒の用意を始める。


 その間曙光の胸は、耳に届くのではないかと思うくらいバクバクと煩く鳴っていた。


「ああ、そうでした。宜しければこちらをお召しになってください」


 朱熹は今香に頼み取り寄せてもらった、曙光用の寝服をそっと取り出した。


 曙光は前回と同じく朝服を着ている。朝までその格好は疲れるだろうと思っての配慮だった。


 曙光は寝服を見て、女性の部屋に訪れるのに朝服はおかしいことに気が付いた。
< 103 / 303 >

この作品をシェア

pagetop