なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 自分よりも力も能力もある人間が近くにいる。


そしてその人は自分よりも皇位継承権は上だった。


その事実は、馬鹿真面目な曙光にとって大きな罪を背負っているような気持ちなのだろう。


 曙光は兄の呪縛から逃れなければいけない。


 でも、その縄を引きちぎるのは本人でなければ意味がない。


 陽蓮の言う通り、大きな国を動かすには壁を自力で突破する力がなければいけない。


(陛下のこと腹が立っていたけど、かわいそうに思えてきたわ)


 ややこしい大きな壁を作った張本人は、呑気に革胡を弾いている。


 そういえば、初めて会った時に誰かに似ていると思ったけれど、それは曙光だったのだと気が付く。


 整った顔立ちは似ていても、雰囲気がまるで違うので兄弟だといわれるまで思い浮かびもしなかった。


 陽蓮は皇帝になるつもりなど微塵もないので、問題は曙光の心一つ。


 どうしたものかと朱熹は頭を悩ませるのであった。
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