なりゆき皇妃の異世界後宮物語
ずんずんと無遠慮に皇帝に近付いてくる秦明を止めるどころか、頭を下げて最敬礼している。


 これだけ見ても、秦明が天江国で相当の権力を持っていることが窺い知れる。


「秦明、ちょぅど良かった。的当てになってくれ」


「馬鹿か、死ぬだろ」


「お前は弓でいっても死なないだろ」


 挨拶のような軽口を叩く。


秦明は数本立てかけられていた弓を勝手に物色し、一本手に取った。


「勝負をしよう」


 そう言って笑みを浮かべた秦明も右肩の衣を脱ぐ。


隆起した肩から伸びる上腕は、曙光に負けず劣らず鍛え抜かれた素晴らしい筋肉だった。


「いいだろう」


 曙光も不敵な笑みを見せる。


「三本勝負だ。先手は、俺から」


 秦明は準備運動もせず、弓を引いた。
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